☆楽天お買い物マラソンは4日(土)20時から☆あの人気企画が復活!開始2時間限定\\全品どれでも半額クーポン//只今配布中~!!
ちゃんとしてるのに満たされない日に、楽天お買い物マラソン半額クーポンで変わる静かな朝の習慣
玄関のたたきにパンプスを脱ぎ捨てて、薄暗い部屋のままキッチンに寄り、昼に淹れたきり飲みきれなかったコーヒーをひと口だけ飲んだら、すっかり冷えていて、ちょっとだけ変な酸っぱさが残っていた。
時計を見たら22時を少し過ぎていて、スマホには楽天の通知がいくつか溜まっていて、ぼんやり眺めていたら、4月4日土曜20時からお買い物マラソンが始まって、開始2時間限定の半額クーポンが配布中、という文字が目に入った。
参考にしていたDRIP COFFEE FACTORYの楽天店も、セール企画やクーポン案内を出していて、4月2日時点でショップ評価は4.79、レビュー件数は13,071件になっていたらしい。
こういう数字を見ると、ちゃんと人気のある場所なんだなと思う反面、みんなそんなに上手に買い物して、上手に暮らしているんだろうかと、よくわからない方向にまで気持ちが伸びていく。
こういうときの私は、だいたい疲れている。
疲れているのに、寝る支度をするでもなく、メイクを落とすでもなく、ラグの上に座ってスマホだけはしっかり握っていて、コーヒー豆とかドリップバッグとか、たぶん今すぐ必要じゃないものを、必要みたいな顔で見てしまう。
見ているうちに、必要じゃない、でも欲しい、いや欲しいというより、少し変わりたいのかもしれない、みたいな、曖昧で面倒な感情が出てくる。
たかがコーヒーなのに、と思う。
でも、たかがコーヒーくらいにしか、期待できない夜もある。
仕事でずっと笑っていた日の夜は特にそうで、受付で感じよくして、ちょっとした気遣いも忘れないようにして、ちゃんとしてる人の顔を一日中つけていたぶん、部屋に帰ったあとで急に全部が雑になる。洗濯物は椅子に積んだままだし、テーブルの上には使いかけのリップと開封しただけの美容液の箱、昨日のレシート、飲みかけの水。
外から見たらそれなりに整っている人でも、帰宅後の生活音は意外とだらしない。たぶん私だけじゃないんだろうけど、こういうことはなぜか誰にも言わない。
だから、セールの画面に並ぶ「人気」「限定」「今だけ」という言葉に少し救われるのかもしれない。
その日うまくいかなかったことを、生活の中で言い換えてくれるから。
今日は接客中に、年下の後輩に先を越されて少しだけモヤっとした。べつに嫌な子じゃないし、感じもいいし、ちゃんと頑張ってるのもわかる。
ただ、その子の肌がつるんとして見えた瞬間とか、閉店後に「今度彼と旅行行くんです」と軽く言った声とか、そういう何気ないものに反応してしまった自分を、あとからじわじわ恥ずかしく思う。そんなことで揺れるなんて小さいな、と思いながら、揺れるものは揺れる。
家に帰ってからInstagramを開けば、誰かの丁寧な朝ごはんや、誰かの婚約報告や、誰かの“頑張りすぎない暮らし”が流れてきて、頑張りすぎないって言いながら部屋がきれいな人は信用していいのか、みたいなひねくれたことまで考える。たぶん、ああいう投稿に勝手に傷ついている時点で、かなり疲れている。
そんな夜に、DRIP COFFEE FACTORYのページで、焙煎士監修の自家焙煎コーヒー店という説明や、人気ランキングの更新日が04/02になっているのを見た。
リッチブレンドやドリップバッグのアソートが上位に並んでいて、ちゃんと誰かの生活に入り込んでいる感じがした。おしゃれすぎないのに、でも手を抜きすぎてもいない、みたいな距離感が少しだけよかった。
すごく人生が変わるわけじゃないけど、朝の一杯くらいなら変わるかもしれない、という控えめな期待だけ置いていける感じ。そういうの、今の私にはわりと大事だったりする。
たまに思う。
私は本当にコーヒーが欲しいんだろうか、と。
半額クーポンに反応している自分の中には、節約したい気持ちもあるし、得したい気持ちもあるし、ちゃんと選べる人でいたい気持ちもある。婚活で課金するときも少し似ていて、相手を探しているはずなのに、いつのまにか“選ばれる自分”を買おうとしている感じがする。
美容液を買うときもそうだし、下着を新調するときもそうだし、コーヒーを少しいいものにしたくなるときも、結局は生活そのものより、自分への見え方を整えたくて動いているのかもしれない。
それが悪いとも言い切れない。
見た目とか習慣とか、小さな持ち物とか、そういうものでぎりぎり保っている日もあるから。
朝、適当に淹れたインスタントで済ませた日は、そのあとも全部が雑に流れていく気がするのに、ちゃんと好きな香りのするコーヒーを入れた朝は、顔を洗う時間まで少しだけ丁寧になる。ほんの数分のことなのに、不思議なくらい違う。
だからお買い物マラソンとか、開始2時間限定クーポンとか、そういうイベントに心が動くのは、安く買いたいだけじゃなくて、明日の自分をちょっとだけマシにしたいからなのかもしれない。しかもその“ちょっとだけ”が、今の年齢になると意外と切実だ。
若い頃みたいに、勢いで全部変えられる感じはもうない。
転職サイトを眺めてもすぐ閉じるし、アプリでいいねが来ても、会うところまで気持ちが続かなかったりする。なのに、生活を変えたい気持ちだけはちゃんとあって、そのくせ大きいことは怖い。だから、豆か粉かを選ぶとか、何袋セットにするかで迷うとか、その程度の選択の中で、私はまだ自分の機嫌を取ろうとしている。
これって、少し情けないんだろうか。
それとも、大人の買い物ってわりとそういうものなんだろうか。
本当は、誰かに「そんな日あるよ」と言ってほしいだけの夜に、私はクーポンを保存して、レビューを読んで、ランキングを見て、カートに入れて、でもすぐには買わない。買えば満たされるとも思っていないし、買わなかったから偉いとも思えない。その曖昧な時間だけが伸びていく。
けれど、冷めたコーヒーの嫌な酸味を口に残したまま眠るより、次の朝に少しだけちゃんとした香りが部屋に広がる想像をしているほうが、たぶんましだった。
そういう、小さすぎる期待でつないでいる夜がある。
4日土曜20時から始まるお買い物マラソンも、開始2時間限定の半額クーポンも、ほんの短いイベントなのに、見ていると少しだけ気持ちが浮くのは、そのせいかもしれない。お祭りみたいな高揚感というより、明日の朝の逃げ道をひとつ確保しておきたい感じ。
DRIP COFFEE FACTORYのページに並んだ商品を見ながら、私が本当に欲しかったのはコーヒーなのか、それともちゃんと生活している気分なのか、まだよくわからないまま、スマホの明るさだけが部屋に残っていた。
そういえば、その夜は、シンクにマグカップを置く音だけがやけに響いた。





